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診療チーム

肝胆膵チーム
【担当医】
水口 木村 永山 今村 山口
水口 プロフィール 木村 プロフィール 永山 プロフィール 今村 プロフィール 山口 プロフィール

肝診療実績

1)主な対象疾患・診療内容 
 対象疾患:肝悪性腫瘍(肝細胞がん・胆管細胞がん・転移性がん・肉腫など)、エキノコックス症、肝良性腫瘍(血管腫、嚢胞など)
 札幌医大の肝臓・脾臓チームでは、2005年1月から2011年12月までの間に合計435例の肝切除術を行ってきました。とくに腹腔鏡を用いた手術は、創が目立ちにくい手術で、痛みが少なく手術後の運動にも不自由しない事が知られております。出血も少なく、輸血を必要としない事が多く、手術時間も短くなりました。専門的には低侵襲と申しますが、腹腔鏡下肝切除手術(後述)は年々増加しております(図1)。すべての患者さまに腹腔鏡手術を行えるわけではありませんが、2004年から導入し、高度先進医療の承認を得てから、現在では腹腔鏡下肝部分切除術は保険で認められた治療法となりました。
 腹腔鏡による肝臓の手術を安全に施行するためには、手術の設計図が必要です。家を建てるときに設計図が必要なように手術でも設計図が必要です。CT画像も320列のCTを使用することで、正確な切除範囲を決められるばかりではなく、切除する血管も手術前からわかりますので、安全な手術が可能になっております。
たとえば、立体仮想模型をコンピュータ―内に作製致しますが(図2)、このために2種類のソフトウェアを使用して、詳細な血管情報や肝臓の区域情報を得るようにしております。これは、外科医には手術の計画を立てるのに非常に有用ですし、患者さまにはどのような手術を受けるのかが手術前に理解できることで安心頂けるものと考えております。ヒトには個性がありますので、患者さまのお持ちになられる個人特有の解剖を把握する事が大切で、私どもでは患者さま一人一人に服を作らせていただくようなオーダーメードの手術を行っております。

(図1)(図2) 肝切除症例数の術式別推移 術前3D-Vincent画像


2)より安全な肝切除を行うための工夫
 術中ではその血管と切除領域を決めるために色素を使用し(図3)、肝臓内の住所にあった手術を施行いたしますので、無駄なく確実に切除できると考えております。術中に切除領域を決定し同定しやすくするために直接、3D画像を肝臓に投影して切除するグリソンの位置をわかりやすくする工夫も行っています(図3)。肝臓の手術では腹部を大きく切らなければ安全に行えないこともございますが、肝腫瘍の存在する位置や大きさによっては腹腔鏡を使用する事で小さな傷から肝臓の手術を行える場合もありますのでご相談ください(図4)。
(図3)(図4)


3)肝切除に使用する手術器械について
 私どもの肝切離には多くの器械を使用致します。通常はダイセクティングシーラー(DS)と超音波メス(CUSA)を使用しておりますが、当院の手術場ではバイポーラーシザース、バイクランプ、アルゴンレーザー、ハーモックスカルペル、リガシュアーが常備されております。このような最先端の器械を駆使してより安全に手術が行われております(図5)。その結果、最近のすべての肝切除症例497例では無輸血率が約90%以上でありましたし、いわゆる術後の肝離断面からの合併症はほとんど経験しないようになりました(図6)。
(図5)(図6)


4)肝細胞癌切除症例の予後
 これまでの肝細胞癌の切除283症例に限りますと、全平均生存期間は76.5ヶ月で5年生存率は54.4%でありました(図7)。ステージ別で見ますと、ステージの進んでいない方の成績は5年生存率で65-80%でありました(図8)。
(図7)(図8) (図7) (図8)


5)大腸癌肝転移切除症例の予後
 大腸癌からの転移性肝癌に対する肝切除術後の予後に関する解析で、5年生存率は57.8%という結果でありました(図9)。また、転移個数では単発と比べて多発では有意に術後生存率が低い結果でありました。最近、当科で施行している肝切除前の全身化学療法施行群と未施行群で比較すると3年生存率で、それぞれ88.4% vs 72.6%であり、術前化学療法あり群で良好な傾向がありました。術後合併症においても術前化学療法の影響はほとんど認められず安全に手術可能でありました。(図9)(図10) (図9) (図10)


 このように最先端の画像技術と手術機器のテクノロージーを駆使し、誰にでも明解な治療を行えるように診療にあたらせていただいております。また、手術以外の治療法での集学的治療にも他科と連携し行っておりますのでどうぞご相談ください。



胆膵診療実績
1.主な対象疾患・診療内容

 われわれは、胆道・膵臓疾患の手術治療を主としています。対象疾患は、膵がん、胆道がん(肝内・肝門部・肝外胆管、乳頭部、胆嚢、のがん)です。
 2014年の本邦がん死亡者のうち、膵がんは31,716人、胆嚢・胆管がんは18,117人を数え、全体の第5、7位を占めています。
 膵がんを根治できる可能性がある治療は切除術(手術)のみであり、これらの患者さんに対しては切除術(手術)が行われます。しかし、膵がんは早期発見が困難なため切除不能な進行がんとして発見されることが多く、切除可能な状態で発見される割合は10~20%です。切除術(手術)を受けても早期に再発することが多く、膵がん切除後の生存期間中央値は12~20ヶ月、5年生存率は10~20%前後にとどまります。治癒や長期生存を目指す上で、切除術に加えて化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法などを行う集学的治療が近年重要視され、臨床試験を積極的に実施しています。
 他には、膵腫瘍(嚢胞性腫瘍や神経内分泌腫瘍など)、胆石症、急性・慢性膵炎、腹部救急疾患の手術も行います。胆石症や低悪性度膵腫瘍に対する腹腔鏡手術には20年以上も早くから取り組んで来ました。


2.診療実績

(表1) 2011年以降の手術実績  2011年以降の手術実績を示します(表1)。大半が肝胆膵(悪性)腫瘍手術となり、全体の60%が開腹手術、40%が腹腔鏡関連の手術でした。この間の在院死亡率は0.99%、肝胆膵高難度手術のひとつである膵頭十二指腸切除(肝膵切除を含む)の術後在院死亡率は0.65%(2013年本邦NCDデータでは2.8%)でした。また、膵原発巣切除167例における腫瘍遺残のない手術(R0切除)の割合は96.4%でした。一方、直近の膵頭部がん切除70症例における術中出血量は260ml(中央値)と著しく低値です。このように、当科における胆道・膵疾患の手術は安全・確実に行われています。
 当院は、肝胆膵外科の高度技能指導医2名と、高度技能専門医1名を擁する修練施設(A認定)です。当科の肝胆膵修練医は、肝胆膵高度技能専門医の取得を目標の一つとし、積極的に手術を行っています。


(表2) 2015年3月までの当科における膵がん切除数と予後 3.膵がん・胆道がんの予後

 2015年3月までの当科における膵がん切除数と予後を示します(表2, 図1)。切除症例の生存期間は28.1ヵ月(中央値)、術後累積生存率は3年35.2%、5年26.5%、10年17.4%と算出されました。病期毎の5年生存率を全国データと比較すると、それらの数値は概ね良好です。
 組織学的完全切除(R0)の達成が危ぶまれる症例(切除境界、borderline resectable; BR)や、局所の進行により切除不能な症例(unresectable; UR)については、手術前治療(抗がん剤治療や放射線治療)を実施し、がんを縮めた後に手術を実施します。こうすることで、術後再発や転移の危険が減少し、術後生存期間が延長する可能性があります。
(図1) 2015年3月までの当科における膵がん切除数と予後


 一方、胆道がんは2015年3月までに397例を治療し、そのうち359例に対して根治切除を行いました。2015年の第51回日本胆道学会・学術集会ワークショップにおいて発表したデータでは、病期(ステージ)III以上の進行症例における3年生存率が68%と良好な成績でした。
 局所進行・広範囲リンパ節転移症例では、膵がんと同様に手術前治療を行っています。これまで、8人の患者さんに実施し、全例がR0切除を達成し、5人の方がダウンステージしました。


4.その他の診療内容

 膵・胆道悪性腫瘍(多くは、がん)は、他の消化器悪性腫瘍に比べ悪性度が高く、難治性です。病期(ステージ)IIIまでの患者さんには、標準的手術を行い、その後速やかに補助化学療法を受けていただけるよう、術後回復過程に配慮しています。
 前述のように、組織学的完全切除(R0)の達成が危ぶまれる(切除境界、BR)患者さんや、局所の進行により切除不能な(切除不能、UR)患者さん、病期(ステージ)IVでとくに局所で腫瘍が増大していたり、大きなリンパ節転移がある患者さんには、状況により手術前に化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を受けていただくことで、がんの進行を落ち着かせてから(病勢コントロール、ダウンステージ、腫瘍縮小、など)、手術を行う工夫を取り入れています。その際の手術は、臓器の主要な動脈や他の血管を合併切除して再建(顕微鏡手術等で繋ぎ直す)するなど、高度で複雑なものとなります。しかし、この方法を行うことにより当初は手術が困難であった患者さんに手術が可能となることがあます。このようにわれわれは、一見すると困難な病状であっても、決してあきらめない姿勢で粘り強く取り組んでいます。


 現在、北海道内の主要施設と協力し、「Borderline resectable 膵がんに対する、術前S-1併用放射線療法およびGemcitabine療法逐次投与の第II相試験(UMIN000012293)」を実施しています。これらの研究を通して、膵がん治療成績が向上することに期待が寄せられています。


 膵がんや胆道がんの診療方針について、他の専門家の意見を求められる患者さんには、積極的にセカンドオピニオンを実施しています。他院で切除できない、あるいは納得できる治療方針を求めたい、といった患者さんとご家族の方は、当院窓口までご連絡ください。
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 われわれはこれまで、膵頭十二指腸切除術後の経口摂取能について熱心に研究を重ねてきました。とくに、術後の胃排泄遅延(Delayed Gastric Emptying, DGE)の原因追求を目的とした、前向き症例集積研究を行い、手術後の経口摂取回復遅延の成因を系統的に分析してきました。その成果を2008 年と2009年に相次いで報告しましたが、とくに2009年の報告は、外科系で最も評価が高い雑誌「Annals of Surgery」に掲載されました(Akizuki E, Kimura Y et al. 2009; PMID 19474680)。
 今後も高難度手術の安全性追求はもちろんのこと、機能温存あるいは低侵襲手術において根治性をいかに担保するかについての研究を重ね、その成果を全国あるいは世界へと発信しつづけます。


札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科
准教授・胆膵チーフ 木村康利