TOP » 教授あいさつ
2025年9月1日付で札幌医科大学外科学講座消化器外科学教授を拝命いたしました穴澤貴行です。どうぞよろしくお願いいたします。札幌医科大学は、広大な北海道の地域医療を支えると同時に、未来の医療を先導する先進医療にも取り組む、稀有な存在です。「地域を支え、先進医療で未来を拓く」ことを目指し、外科学を攻究する外科医の育成に努めてまいります。
私は、2001年に福島県立医科大学を卒業後、同大学第一外科に入局しました。2007年には米国ミネソタ大学外科に留学し、現在に続く細胞移植・再生医療研究の基盤を学びました。2015年からは日本および世界を牽引する施設である京都大学肝胆膵・移植外科にて、教育・研究・診療に従事しました。福島と京都という異なる特色をもつ地域・施設での経験は、札幌医科大学での外科の発展に大きく役立つと考えています。
私は肝胆膵外科を専門とし、高難度手術や低侵襲手術を展開し、移植医療にも携わってきました。札幌医科大学は全国有数のロボット支援手術実績を誇る施設であり、上部消化管・下部消化管・肝胆膵外科が連携して、低侵襲手術のエビデンスや未来の外科手術の可能性を発信していきたいと考えています。また、これまでに主に膵癌治療で経験してきた集学的治療の実践や、がんゲノム医療との連携等をより進化させ、癌治療成績の大幅な改善の達成を目指します。
外科診療の発展には、安全性に裏付けられた高度な技術とチーム医療の深化が不可欠です。世代ごとの役割を明確にし、豊富な執刀経験の提供や高難度症例への対応、新規治療の開発を通じて、地域医療にも貢献する外科医を育成してまいります。
卒前教育では、臨床・基礎研究への早期参加や意見を反映した臨床実習を通じて、外科基本手技や術式判断を指導し、研究的思考を育みます。卒後教育では、研修医の学会発表や論文作成の指導に力を入れるとともに、ご献体(Cadaver)や動物を活用した手術トレーニングを実施し、外科解剖の理解に基づいた手術技術を磨く場を提供します。
現在の外科医療の大きな課題は、地域を支える若手外科医の育成です。そのためには魅力的で実践的な教育体制と多様なキャリアプランの提示が不可欠です。大学病院と地域施設の強固な連携を通じて必要な人材を育成し、地域医療にも先進医療にも貢献できる外科医を育てていきます。
研究では、インスリン依存糖尿病に対する膵島移植成績の向上や、iPS細胞由来膵島細胞移植法の開発、制御性T細胞による免疫応答制御に取り組んできました。膵島移植では、本邦の多施設共同臨床試験を主導し、その成果をもとに保険適応を達成し、研究的治療を一般的治療に導いた経験を有しています。さらに、この経験が「同種iPS細胞由来膵島細胞シートの医師主導治験」へとつながり、2025年2月の世界初の実施に至りました。札幌医科大学は新たな再生医療の臨床展開を牽引してきた施設です。我々もトランスレーショナルリサーチを推進し、世界を牽引する研究成果や新規治療法を発信できるAcademic Surgeonの育成に努めます。
教育・研究・診療の三本柱を充実させ、魅力ある北海道・札幌の地から外科の未来を発信してまいります。今後ともご支援とご指導を賜りますようお願い申し上げます。
2025年(令和7年)9月
札幌医科大学 外科学講座 消化器外科学分野 教授
穴澤 貴行