札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座

乳腺内分泌チーム

主な対象疾患

乳腺疾患
乳がん、乳腺良性腫瘍、乳頭異常分泌症など
甲状腺疾患
甲状腺がん、甲状腺良性腫瘍、副甲状腺機能腫瘍など

検査

マンモグラフィ(乳腺専用)

マンモグラフィ(乳腺専用)

乳房をはさみ圧迫して撮影する乳房専用のレントゲン検査です。しこりとして触らないような早期の乳がんも発見することができます。
超音波検査(乳腺・甲状腺)

超音波検査(乳腺・甲状腺)

超音波プローブをあてて乳房内の病変を調べます。超音波により、体の表面から乳房内が観察できます。血流や病変の硬さを評価することも可能になりました。

MRI(乳腺専用)

MRI(乳腺専用)

乳がんの術前診断に用い、病変の広がりを評価し術式に反映させます。反対側の乳房の状況も確認していきます。うつ伏せで撮影します。

針生検・細胞診(乳腺・甲状腺)

針生検・細胞診(乳腺・甲状腺)

局所麻酔を行い超音波で見える病変に針を刺し、組織あるいは細胞を採取します。採取した組織・細胞は病理組織診断・細胞診として顕微鏡で調べます。

ステレオガイド下マンモトーム

乳房内石灰化などマンモグラフィでのみ描出のある場合に適応となります。撮影をしながら対象の部分を針で生検します。

CT(全身の評価)

CT(全身の評価)

全身を調べて、乳がんや甲状腺がんの進行状況を把握します。遠隔転移の有無も調べます。

MIBIシンチ(甲状腺・副甲状腺)

MIBIシンチ(甲状腺・副甲状腺)

頚部の病変部をレントゲンで断層写真にして調べます。 甲状腺と周囲臓器の位置関係を詳細に調べることで、より安全に手術が行えるようになります。

診療内容

乳がん手術:乳房部分切除(乳がん)

乳がん手術:乳房部分切除(乳がん)
術前にはマンモグラフィ、超音波検査、MRIなどの画像検査にて広がり診断を行い、ICG(色素)を用いて切除範囲をマーキングして大胸筋筋膜を切除する形で円柱状に切除します。摘出標本は、術中迅速組織診、標本軟線撮影を行い確実にかつ正確に病変を切除しています。

色素法+RI法を併用したセンチネルリンパ節生検(乳がん)

色素法+RI法を併用したセンチネルリンパ節生検(乳がん)
術前日にフィチン酸テクネシウムを局所注射し、センチネルリンパ節のマッピングをSPECT-CTにてイメージ化します。手術時は、インジコカルミンを局所注射し色素法も併用し確実なセンチネルリンパ節生検を行います。

腋窩郭清術(乳がん)

リンパ節転移陽性の症例においては、局所制御のために腋窩郭清を行っています。超音波凝固切開装置を用いることにより手術時間の短縮と出血量を減少させます。常に安全で確実な手術を心がけています。

当科における乳がんに対する術後薬物療法の方針について(乳がん)

ER/HER2を基本としたバイオロジーからサブグループごとに分け、各臨床病理学的因子を参照して術後治療について個別に検討していきます。ER+/HER2- 中間リスク症例に対しては、Oncotype DXといった遺伝子診断ツールを積極的に行っています。化学療法を上乗せするかしないかは患者さんにリスクとベネフィットを十分に説明し、納得されてうえで治療を進めていくことを心掛けています。


超音波凝固装置を用いた手術(甲状腺がん)

エネルギーデバイスを用いることで、安定した血管シール機能による出血量の減少と、手術操作の簡略化に伴い手術時間の短縮をこころがけています。

Nerve Integrity Monitorを使用した手術(甲状腺がん)

Nerve Integrity Monitor (NIM)を使用して甲状腺下極〜後面の反回神経をモニターし、反回神経が温存されていることを確認しながら手術を行います。外側区域の郭清の際は迷走神経についても確認が可能であり、安全で確実な手術をこころがけています 。

診療実績

乳がんの手術件数

乳がんの手術件数と術式

手術症例は年々増加していましたが、コロナ禍においても感染対策を行い安全に手術を行っています。乳房を温存する部分切除術も多く行っています。また、乳房再建術は施行可能な体制が整っています。

エネルギーデバイスを用いた手術(乳がん)

当院では、従来の手法(Conventional Surgery: CS)に変わって超音波凝固切開装置(Ultrasonic activated device: UD)を用いています。手術時間が短縮され出血量は減少しています。

疾患毎の予後

pStage別の無再発生存率

Subtype別の無再発生存率 (pStage I-III)

2011年1月〜2017年12月の当科の手術症例における、病期分類別の無再発生存曲線です。5年無再発生存率はStage 0, 1, 2, 3それぞれ97.7%, 94.8%, 85.3%, 62.5%でした。日本乳癌学会全国乳がん患者登録調査報告(2004年次症例)によると5年生存率はStage 0, 1, 2, 3それぞれ96.3%, 92.2%, 81.6%, 58.4%であり遜色のない結果が得られています。また、サブタイプ別にはER+/HER2-群の5年無再発生存率は88.6%と最も良好で、ER-/HER2-が74.5%と最も不良であり、他の報告と相違ありませんでした。抗HER2療法の進歩による劇的な改善と対症的にトリプルネガティブ乳癌に対する治療について課題があることがわかります。

特色

エネルギーデバイスを用いた腋窩郭清

乳がん手術においては、整容性はもちろんのこと根治性も重要視しリンパ節転移のある場合は、エネルギーデバイスを用いて低侵襲で安全性の高い腋窩郭清を行います。

充実したチーム医療

乳がん治療の多様性に合わせたチーム医療を実践しています。ひとつの診療科だけでは解決が難しい場合がありますので、多くの専門科との連携でこそ解決していきます。

臨床試験

  1. トリプルネガティブ乳癌におけるERO1-Lαをターゲットとする 免疫複合療法の開発
  2. HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブ・ペルツズマブ併用術前化学療法に関する前向き観察研究
  3. 転移・再発乳がんに対するベージニオ(アベマシクリブ)の内服状況・QOLに関する前向き観察研究
  4. 乳癌のリンパ節転移における免疫抑制に関する観察研究
  5. 転移再発トリプルネガティブ乳がんに対するAtezolizumab療法のバイオマーカーや治療標的の解明
  6. 転移性再発トリプルネガティブ乳癌アテゾリズマブ+ナブパクリタキセル療法による免疫関連有害事象の対応とQOLに関する観察研究
  7. 乳癌に対する造影超音波の造影域が示す病理学的所見についての後方視的研究
  8. 転移再発乳がんにおけるエリブリンのがん微小環境に対する作用メカニズムの解明と予後の解析
  9. 腋窩転移陽性乳がんのリンパ節における免疫制御に関する観察研究
  10. 若年乳がん患者の妊孕性温存に対する関心と需要に関する研究
  11. 造影超音波を用いた乳がん術前化学療法の残存病変の診断に関する前向き研究
  12. 乳がんにおけるAtezolizumabの新たな作用機序の解明
  13. TILを豊富に有する乳癌(LPBC)の特徴的な超音波画像所見の検討と診断予測への応用
  14. 乳がん手術後のドレーン抜去時期と有害事象の関連性についての後方視的観察研究
  15. トリプルネガティブ乳癌患者に対するアテゾリズマブの前向き観察研究
  16. 腋窩リンパ節転移陽性乳がんのリンパ節における免疫抑制に関する観察研究(後方視的研究)
  17. HER2陽性進行・再発乳がんにおけるトラスツズマブ、ペルツズマブ、タキサン併用療法とトラスツズマブ、ペルツズマブ、エリブリン併用療法を比較検討する第Ⅲ相臨床研究 EMERALD試験 (JBCRG-M06)
  18. 転移・再発乳癌における遺伝子パネル検査FoundationOneⓇCDxの治療方針決定に与える影響を検討する観察研究 REIWA試験 (JBCRG-C07)
  19. 閉経後ホルモン受容体陽性切除不能および転移・再発乳癌に対するパルボシクリブ療法の観察研究 Palbociclib Cohort (CSPOR-BC)
  20. 切除不能または再発乳がんにおけるT-DXd治療期間中のePROモニタリングの有用性を検討するランダム化比較試験 PRODUCE試験 (CSPOR-BC)
  21. AC療法に対する標準制吐療法へのオランザピン5mg追加効果検証試験(ランダム化比較試験)
  22. LigasureTM Exact Dissectorを用いた乳がん手術の後ろ向き観察研究 (Sugar Raised Doughnuts study)

担当医

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