札幌医科大学 消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座

肝胆膵チーム

主な対象疾患

肝癌、肝腫瘍
脾疾患
脾腫瘍、脾腫、脾機能亢進症
膵癌、膵腫瘍
胆道癌
胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌
良性疾患
胆石症、膵炎

検査

肝腫瘍

造影CTによる立体画像

体内を詳細かつ連続的に撮影し、コンピュータで分析することで鮮明な画像を得ることができます。最近では機器の発達とともに任意の角度から立体的に観察することが可能です。

肝予備能評価

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安全な肝臓の切除量を決めることが長年の課題でした。当科ではこれまでのデータから独自の肝予備能スコアを作成し、安全肝切除容積を推定します。これによって、5%程度に見られていた肝不全はほとんどなくなりました。

胆道癌

胆道癌の切除前シミュレーション

CTを応用し、脈管解剖の把握と術式に応じた残肝容積を測定することで、精密で正確なシミュレーションを施行しています。

次世代の胆管イメージング

 

現在は、CTを利用したVirtual Cholangioscopyの作成による手術支援を試みています。

診療内容

開腹肝切除術

腫瘍が大きい場合や、肝臓内の大きな血管と接している場合など、腹腔鏡下での切除が容易ではない場合に行います。

腹腔鏡下肝切除術

様々な工夫や手技の向上により、腹腔鏡下肝切除術の適応は増えつつあります。必要に応じ約7cmの傷から執刀医の左手のみを腹腔内に挿入する用手補助下手技(ハンドアシスト)や肝臓の周囲組織との癒着剥離にだけ腹腔鏡を用い、肝切除は小開腹下に行うこともあります(腹腔鏡補助下手術)。

脾疾患

腹腔鏡下脾臓摘出術

左上腹部の最深部に存在する脾臓を良好な視野のもとで手術操作することが可能であり、腹腔鏡下手術の特性が最もよく生かされた術式の一つと言えます。当科でも腹腔鏡下手術を基本としており、多くの患者さんは1週間以内に退院しています。

胆道癌に対する根治術

胆道癌に対する大量肝切除

厳密に肝予備能を評価したうえで、R0を目指した拡大肝葉切除、肝三区域切除、肝膵同時切除などを積極的に行っています。

肝門部胆管切除

肝予備能と根治性の点から、肝門部胆管切除を施行することもあります。この場合肝管は多穴となり再建もやや複雑になりますが、細径の手術器具等を用い、丁寧に施行しています。

局所進行病態に応じた手術手技

膵がんにおいて、組織学的完全切除(R0)の達成が危ぶまれる (切除不能境界、BR)症例や、局所の進行により切除不能な(切除不能、UR)症例、病期(ステージ)IVでとくに局所で腫瘍が増大していたり、大きなリンパ節転移がある症例には、手術前に化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を行い、病勢コントロール、ダウンステージ、腫瘍縮小した後に手術を行う方針(NAC、NAC-RT、Conversion Surgery)に積極的に取り組んでいます。

膵がんに対する膵頭十二指腸切除

R0を目指したmeso-pancreasへのアプローチと、術後QOLを考慮した病態に応じた郭清範囲を心掛けています。

診療実績

手術実施症例の疾患臓器内訳

肝切除術式の推移

完全鏡視下手術症例が増加する一方、開腹手術症例の割合は減少しています。昨年は再肝切除や巨大腫瘍を理由とする開腹肝切除が増えました。腹腔鏡補助下も腹腔鏡関連手術としますと、腹腔鏡手術の割合は68%以上の施行率です。また、近年は輸血を要する症例はほとんどありません。

膵・胆道手術症例の疾患臓器内訳

2017年以降、直近5年間の手術実績を示します。
大半が肝胆膵(悪性)腫瘍手術となり、全体の約60%が開腹手術、約40%が腹腔鏡関連の手術でした。
また、膵胆道腫瘍切除312例における腫瘍遺残のない手術(R0切除)の割合は95.2%でした。一方、直近の膵頭十二指腸切除連続193症例における術中出血量は190ml(中央値)と著しく低値です。
このように、当科における胆道・膵疾患の手術は安全・確実に行われています。

疾患毎の予後

肝がん外科治療の成績

肝細胞癌
転移性肝癌

肝細胞癌の治療成績はほぼ標準と考えています。転移性肝癌の治療では、基本的に同時性でも肝切除前に術前化学療法を行ってきました。術前化学療法によってがんが消えた症例を4例に経験しています。特徴としては単発症例が46例と多く、全国平均と比較して5年無再発生存率が高くなっています。

胆道癌の外科治療の成績

2017年12月までに切除した胆管癌191例

膵癌の外科治療の成績

2019年12月までの膵癌切除症例は342例となっています。
2015年3月までに手術を受けた膵がん切除症例の生存期間は28.1ヵ月(中央値)、術後累積生存率は3年35.2%、5年26.5%、10年17.4%でした。病期毎の5年生存率を全国データと比較すると、それらの数値は概ね良好です。さらに、最近の手術アプローチにより生存期間は延長し、局所再発率が低減しています。

肝胆膵チームの特色

アクアハンギングマニュエバー法

肝葉切除時にハンギングマニュエバーを行うときの工夫です。生食注入による圧を利用して剥離操作を行うことにより、安全かつ容易、創の縮小化に貢献します。

Mizuguchi T, et al. J Am Coll Surg. 2014

1.局所進行膵癌の外科治療

当院受療膵癌の切除率

 組織学的完全切除(R0)の達成が危ぶまれる症例(切除不能境界borderline resectable; BR)や、局所の進行により切除不能な症例(unresectable; UR)については、手術前治療(抗がん剤治療や放射線治療)を実施し、がんを縮めた後に手術を実施します。こうすることで、術後再発や転移の危険が減少し、術後生存期間が延長する可能性があります。

 当院で受療した2016年までの膵癌719例のうち、局所進行により当初は切除不能であった106例の患者さんに積極的な集学治療が実施された結果、根治手術が可能となった患者さんが15(16.1%)にのぼり、それらの生存期間が手術に至らなかった患者さんと比較して有意に延長しました。

2.高度進行胆道がんに対するダウンステージ療法後の根治術成績

局所進行・広範囲リンパ節転移症例では、膵がんと同様に手術前治療を行っています。これまで、15人の患者さんに実施し、14(93.3%)R0切除を達成し、8(57.1%)の方がダウンステージしました。

臨床試験

  1. CT Perfusion を用いた血流動態解析による膵頭十二指腸切除後患者の経口摂取能評価に関する後向き研究
  2. 膵・消化管および肺・気管支・胸腺神経内分泌腫瘍の患者悉皆登録研究
  3. 肝細胞癌に対する肝切除またはラジオ波焼灼療法施行後の再発治療・長期予後に関する多施設共同後ろ向き観察研究:SURF trial 付随研究
  4. 小型肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除、開腹肝切除と経皮的ラジオ波焼灼療法の治療成績の比較: SURF trial 付随研究
  5. 術中インドシアノグリーン蛍光診断法を用いた肝腫瘍検出の有用性に関する前向き観察研究
  6. 症例登録システムを用いた腹腔鏡下肝切除術の安全性に関する検討 ~前向き多施設共同研究~
  7. 大腸癌肝転移に化学療法が与える影響に関する探索的観察研究
  8. 腹腔鏡下肝切除術の成績に関する後ろ向き観察研究
  9. 胆道癌・肝内胆管癌の病態解明を目指した後ろ向き観察研究
  10. 胆道再建を伴う肝葉切除以上を要する症例における肝予備能評価法の妥当性に関する観察研究
  11. 胆嚢癌の診断と治療方針・予後に関する前向き観察研究
  12. Borderline Resectable 膵癌を対象とした術前ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法と術前S-1併用放射線療法のランダム化比較試験 (JASPAC 07)
  13. 膵癌切除術後肺転移の臨床病理組織学的特徴に関する後ろ向き観察研究
  14. 膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵癌の分子病態解明と診療に有用な分子マーカー同定を目指した後向き観察研究
  15. 膵体尾部癌に対する術前EUS-FNAの術後経過への影響に関する研究
  16. 膵胆道・消化管神経内分泌腫瘍の病態解明を目指した後向き観察研究
  17. 腹膜転移を有する膵がんに対するS-1+パクリタキセル経静脈・腹腔内投与併用療法の無作為化比較第Ⅲ相多施設共同臨床研究
  18. 経時的エクソソーム解析による膵癌術後早期再発ハイリスク症例診断法の開発
  19. 膵希少腫瘍の病態解明を目指した後向き観察研究
  20. 切除可能膵癌を対象とした術前ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法の第II相臨床試験 (HOPS-R02)
  21. 膵頭十二指腸切除後のアウトカムに関する後向き観察研究
  22. 日韓共同プロジェクト研究:Vater(ファーター)乳頭部がん(十二指腸乳頭部がん)に対する術後補助療法の治療成績に関する後方視的観察研究

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